小川糸さんの『さようなら、私』を読みました。この本には3編の小説が入っています。短編集の場合、その中の一つの作品のタイトルが、本のタイトルになることが多いように思いますが、この本の場合は3編に共通するテーマが本のタイトルになっているのだなと思いました。3編とも主人公は女性で、それぞれある悩みを抱えています。
1つめの「恐竜の足跡を追いかけて」では、初恋の相手に久しぶりに再会して、モンゴルへの旅に誘われます。もちろん、本で読むのと、実際に行って体験するのとでは全然違うと思いますが、読んでいて、今の日本での暮らしに慣れていると、あれもこれもなくて、不便で仕方ないって初めのうちは思うんだろうなと。でも、その中で暮らしていれば、それが当たり前だし、時間の流れ方も、考え方も違うんだろうなと思います。外の世界を知るっていうのは大事だなと思います。
「恐竜の足跡を追いかけて」の中で私が気に入った言葉は、
「もし自分に行き詰まったら、もっと広い世界に飛び出して、自分よりも上を見るといいんだ。狭い世界でうじうじしていたら、もっと心が狭くなってくだらない妄想にとりつかれるんだけだもん。」
そして、もう一つは、
「自然界には、真っ平らも真っ直ぐも存在しないんだよ。歪んでいて当然なんだ。」
というセリフです。真っ平らも真っ直ぐも、見た目はきれいだと思いますけど、必ずしもそうである必要はないんじゃないかな、少なくとも無理してまでは、と思いました。