すっきりした部屋であまりゴミを出さずに暮らしたい

暮らしは小さくてもすっきりと、心はゴチャゴチャしてても大らかに

本棚:『この部屋で君と』

「気鋭の作家8名がさまざまなシチュエーションを詰め込んだひとつ屋根の下アンソロジー」と裏表紙に書いてあるように、同じ家に住む二人のお話ですが、この二人は恋人同士とは限りません。面白いなと思ったのは、それぞれの作品のはじめに部屋の間取りだけでなく、最寄り駅から徒歩〇分とか、家賃とかも書いてあります。この春から、新しい部屋での暮らしを始めた方も多いでしょうが、引越ししなくても、物件情報を見るのは楽しいですね。

 

私の印象に残った2作品を紹介したいと思います。

1つ目は、最初に収録されている、朝井リョウさんの『それでは二人組を作ってください』です。主人公の女子大生は、社会人のお姉さんと2DKに二人暮らし。でも、お姉さんが結婚に向けて彼氏と一緒に住むことになり、新しいルームメイトを探さなければなりません。でも、彼女は子供の頃から、二人組を作るシチュエーションで、一人だけ外れてしまうタイプ。体育でのストレッチのペアなどに比べると、ルームシェアの相手を見つけるのはかなりハードルが高いと思います。自分自身について振り返ってみると、だいたい前から順にペアを作るような場面が多かったと思うので、すごく困ったという記憶はないですが、主人公と同じ立場だったら、多分、部屋は狭くなっても新しく一人暮らし用のアパートに引っ越すと思います。話がちょっと逸れましたが、二人組を作るってハードル高いし、少し残酷かも、と思いました。これが、2人か3人のグループを作って下さいだと、そんなに苦労しないだろうになんて思いましたが、ただ一人の相手を探さなければならない場合も人生にはあるのでしょう。

2つ目は、三上延さんの『月の砂漠を』です。こちらの物件情報を見ると、代官山駅 徒歩1分。家賃は月23円。私は最初、23万円かと勘違いしましたが、23円です。その理由は、築年数を見ると分かります。築年数 0年(昭和2年竣工)と書いてあります。この作品だけ、ちょっと昔の時代設定なのです。関東大震災で大事な人を失った二人が夫婦となって、一緒に暮らしている部屋なのですが、主人公の妻は、当時では最新鋭のこのアパートが好きではありません。でも、最後の方で、どうして夫がこのアパートを選んだかの理由が分かります。色々書きたいことはありますが、ネタバレになってしまうのでやめますが、この作品の最後が一番好きです。ただ、作品にはありませんが、昭和のその後のことを思うと、どうか二人が長く幸せであるようにと願わずにはいられません。