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本棚:『ほたるの星』

宗田理さんの『ほたるの星』を読みました。本の裏表紙には「実話をもとに映画化された感動作「ほたるの星」の原作本」とあります。宗田理さんといえば、私は中学生の頃に「ぼくらシリーズ」でお世話になりました。 

ほたるの星 (角川文庫)

ほたるの星 (角川文庫)

 

 作品の舞台は山口県。新米教師の三輪元は、工業高校を卒業後、会社勤めをしていましたが、その時に吉田松陰を知り、先生になろうと思います。そして、念願かなって山口県の小学校に赴任します。太陽観測のために行った近くの川で「ホタルでも飛んだらきれいだろうな」となにげなくつぶやいたところから、子供たちが「飛ばそう、飛ばそう」と言い出します。そして、実際にホタルの飼育を始めます。

山口県に住んでたことがあるので、セリフの方言が懐かしく、読んでいる間は、私もその場にいるような気分になりました。私が初めてホタルを見たのは、父の実家の近くの川。小学校低学年、もしくは、まだ小学校に入る前だったかもしれません。父に連れられて行き、初めてホタルを見たときは、幻想的な気分になりました。その次にホタルを見たのは、数年前。たくさんのホタルが飛んでいて、思い出すと夢の中のできごとだったんじゃないかと思えるほどです。

元と子供達が始めたホタルの飼育を良く思わない教師たちもいます。保健の先生は元たちの味方ですが、「みんな、元さんが失敗するのを待っちょるんよ。そのとき、それ見たことかと言うやろうね。中年になると、何事もなく、平穏な日々を送ることを望んじょるんよ。元さんのやっちょることは、静かな池に石を投げ込んだようなもんいね。今は波紋が拡がっちょっても、やがて石が沈めば波紋は消えて元の静かな池にもどる。それで世はこともなし」と言います。自分はそういう中年にはなりたくないと思いました。

一方、元校長の西村は人生をマラソンに例えて、次のように子供たちに語りかけます。

「自分より先に行く人がいるからといって、無理して追いつこうとすると、途中でばててしまう。自分のペースに合わせて走ることがばてない秘訣だ。

人生もそれと同じ。速い人もいれば、遅い人もいる。しかし人生のマラソンは途中でいろいろなことが起きる。若いときには優れていても、途中で挫折する人もいる。楽しいこともあれば、悲しいこともある。もう止めたいと思うときもある。しかし止めることは人生を捨ててしまうことだから、それはできない。

人生のマラソンでは、勝利者になることは一等になることではなくて完走することだということを自分に言い聞かせておこう。」

作品の後に、監督による映画「ほたるの星」撮影後記があります。その中に「稲もほたるも一年」とあります。作中で、子供たちに田植えの体験学習をさせる場面もあるのですが、ホタルも稲も育てるのに1年。何事も速ければいいというものではなく、育つということには時間がかかるのだなと改めて思いました。