できるだけ身近に、歩いたり自転車に乗ったりすれば行けるような日常生活のそばになければ、人は本も本屋も忘れてしまう。本屋を知らずに育つ子どもが増えて、ますます本離れが進む。
「出版社営業・井辻智紀の業務日誌シリーズ」の第1弾です。「成風堂書店事件メモ」シリーズの4作品目の『ようこそ授賞式の夕べに』を読んで、こちらのシリーズも気になって、早速 図書館で借りました。智紀は、昔から本に携わる仕事をするのが夢でした。しかし、営業が向いているとは思わないけれど、どうしても編集部だけは避けたかったのです。さて、その理由とは?
智紀と他の出版社の営業マンである真柴とのやり取りが面白いです。 真柴は、智紀のことを「ひつじくん」と呼び、その度に智紀は「井辻ですけど」と訂正しますが、真柴は聞く耳持たず…。
本書の5作品目では、ある書店のフロアマネージャーが考えたイベントにより、その店を担当している営業マンが、自社本と他社本の中から、それぞれ一冊ずつプッシュする本を選び、各自でポップを制作し、売上を競うことになります。チャンピオンとなると、翌月1ヶ月間、その人の所属する出版社の本で平台を埋め尽くすことができます。この作品中で、各社の営業が他社本に選んだ本として紹介されているのが、
『忘れ雪』新堂冬樹
『青葉繁れる』井上ひさし
『カレーライフ』竹内真
『母』三浦綾子
『サンタクロースのせいにしよう』若竹七海
『幻の特装本』ジョン・ダニング
となっています。残念ながら、1冊も読んだことがなく、またまた読みたい本が増えてしまいました。
さて、冒頭は絵本に力を入れている書店のお話の中に出てくる、ある書店員の言葉。電子書籍もいいけれど、やっぱり紙の本の方が好きだし、絵本は絶対、紙がいいと思います。そして、身近に本があるという環境は幸せだと思います。