すっきりした部屋であまりゴミを出さずに暮らしたい

暮らしは小さくてもすっきりと、心はゴチャゴチャしてても大らかに

本棚:『私にふさわしいホテル』

(本日から しばらくの間、読書ブログになります。)

神保町古本屋街、大手出版各社に近く、調べものや打ち合わせの勝手が良いばかりではなく、行き届いたホスピタリティ、物書きに多い美食家をうならせる料理の美味しさ、巣ごもり気分になれる丘の上の静謐な空間。山口瞳が「小説家のためのホテル」と称した「山の上ホテル」。

今宵、山の上ホテルの401号室に3年連続で同じ日取りで宿泊するのは、裾のふんわりしたエレガントなサマードレスに身を包んだ女性。

と、そこまではよいのですが…。彼女は さる文学新人賞に応募し大賞を受賞したものの、同時受賞したのが、数年前まで人気絶頂だったアイドル女優。念願の小説家デビューをはたしたものの、昼も夜も働き通しのフリーター。大学のサークルの先輩であり、大手出版社の編集者の遠藤先輩からは「自腹で小説家ごっこかよ!」とからかわれますが、ある耳寄りな情報を入手して…。

 

小説家としてデビューするのも、本を出版するのも、賞を受賞するのも、安定した人気を確保するのも…、大変なんだなぁと思いました。また、有名になればなるほど、賛否両論、耳にする機会も増えます。とはいえ、この主人公の女性、作り話は上手で、演技力も抜群。手段を選ばず、守るのは法律ではなく目的。おそらく、こうやって人気作家になっていった方はいないのでは…?と思いますが、その貪欲さが憎めないというか、潔いというか。

本屋さんで万引き犯を捕まえるシーンがあるのですが、犯人が持つ紙袋の中身には、京極夏彦宮部みゆき東野圭吾三浦しをん らの新刊がぎっしり。彼女が万引き犯に放ったセリフが「どうせ盗むなら、売れっ子以外の本もちゃんと盗め!口惜しかったら自分が本当に欲しい本探して盗め!犯罪者のくせして、世の中のものさしに従ってんじゃねえよ!」。え?そこ?と思わず、笑ってしまいました。

将来の夢が小説家だったこともあるけれど、小説家になるのも、なった後も大変なんだなぁと思いました。本がいっぱいあって、いつでも読める環境にある読者の立場がありがたいです。世の中のものさしではなく、自分が本当に欲しい本をたくさん探したいと思います(もちろん盗みませんが)。

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