久々の本シリーズ。今回は横溝正史ですが、幻の新聞掲載小説が77年の時を経て、数年前に単行本化された『雪割草』にまつわる2つの事件。それは、2012年と2021年に旧家の邸宅で起こったもので…。と過去形で書いているのは、本書のプロローグとエピローグは、2021年よりさらに先なのです。
横溝正史はなんだか怖いイメージが強くて読んだことがなかったのですが、『雪割草』は家庭小説ということで、読んでみたいなと思いました。金田一耕助が初登場する『本陣殺人事件』が発表される前の作品で、金田一に似たキャラクターが出てくるというのも興味がわきます。しかも、当時掲載されていた地方新聞を購読していた人たちを除けば、数年前までは読むことのできなかった作品です。
本書の2021年では、栞子さんと大輔の一人娘である扉子は小学3年生。読書感想文の本に選んだのが横溝正史の『獄門島』。担任の先生は、なんとか他の本にさせようとするのですが…。読書感想文でなくとも、例えばピアノコンクールとかでも、コンクールに適した作品とそうでない作品みたいなのがありますよね。好きな本を読んだり、好きな曲を弾いたらいいのに…と思うけれども、大人の事情というのでしょうか…。ちなみに中学の頃、国語の先生が、以前、国語辞典で読書感想文を書いた生徒がいたとのことで、その感想文はなかなか面白かったとのこと。その話を聞いたとき、課題図書じゃなくてもいいんだ!何でもいいんだ!と思ったことを思い出しました。
さて、本シリーズを読むと思うのは、所有欲やモノへの執着への怖さ。好きなものをコレクションしたくなる気持ちは分からなくもないけれど、結局は、あの世には持って行けないわけですし。そう思うのは、最近、遺品整理関連の本を読んだからというのもあるけれど、モノは使われてこそ価値があって、きちんと使いこなそうと思ったら、それほどたくさんのモノは持てないと思うんですよね。