すっきりした部屋であまりゴミを出さずに暮らしたい

暮らしは小さくてもすっきりと、心はゴチャゴチャしてても大らかに

本棚:『空き家再生ツアー』

岸本葉子さんの小説。エッセイは何冊か読んだことがありますが、小説は本書が初の作品のようです。タイトルに惹かれて借りましたが、短編集でして、表題作は最後のお話。いずれも五十前後の女性が主人公です。そして、それぞれのお話で登場人物やお店がつながっています。

 

一番印象に残ったのは、最初のお話。主人公の幸子は、均等法以前の入社で庶務課に長年勤めています。大卒女子が男子と同じ枠で採用される前の、変則的な扱いで入社し、同じように入社した女子は、幸子を除いて、みなすでに退職。一方、均等法以降の女子は、男子と同じく営業研修を受けており、大卒社員で営業研修を受けていないのは幸子だけ…。急遽、この研修を受けることになったのですが、そもそも営業はないから今の会社に就職した幸子は、たった2週間の研修でも会社を辞めるかまで悩みます。

他の人は普通にこなしていることであっても、自分にとっては、この上なく苦手なこと、嫌なことってありますよね。人それぞれ向き不向きがあるのに、どうしてみんなと同じようにやらなければいけないのか!と憤るものの、面と向かってそうは言えない弱い自分。でも、そういうのも、これからは変わっていくのかなぁ…?

「長女の春」というお話では、父親と同居している妹夫婦に、日頃、父の世話を任せっきりの直子が、父親を食事に招待することに。しかし、店に向かう途中、当初の予定が狂い、タクシーを呼ぼうと慌てる中、坂道を危なっかしげに下りてくる父の姿に、自分に求められていることは何かを理解します。

ふだん一緒にいなかったり、お年寄りと接する機会がないと、自分も同じようなことをやってしまいそうだなと思いました。自分では良かれと思ってやったことが、親にとってはそうでもなく、でも、無理して嬉しそうなふりをさせるかもしれない…。

ハラハラドキドキするようなことが起こるわけでもなく、日々を生きている彼女たちに、近い将来の自分を重ねて読みました。