「うしろむき」と聞くと、なんだかネガティブなイメージを持ってしまいますが、きっとそれは思い込み。見方を変えれば、また違ったイメージになります。
【本の内容】
都心から私鉄で約20分。並木台駅北口から徒歩10分弱。少し前の、古きよき時代を思い出すようだからと、うしろむき夕食店といつの間にか呼ばれるようになった夕食店シマ。店主の志満さんと孫娘の希乃香さんの2人が着物姿でおもてなし。このお店には、ちょっと変わった料理のオーダーシステム、お料理おみくじというものがあって…。
【感想】
著者は『縁結びカツサンド』がデビュー作の冬森灯さん。本書でも、これって前作のお店のことだよね?と思われるところがあり、ちょっと嬉しくなりました。そして料理のイラストのおいしそうなこと!
また、志満さんのセリフがいいんですよ~。
人生に失敗なんて、あるものですか。そのときどきでうまくいかないことがあっても、それは失敗じゃなく、めぐりあわせですよ。仮にうまくいかないのなら、その場所は、うまくいくための経由地なの。時間が経てば、それも必要な経験だったと思えます。
以前読んだ『ひぐまのキッチン』の3作目で知った「コンステレーション」という言葉を思い出しました。その言葉を知って以降、いいことも悪いことも未来につながっていると思うようになりました。そして、その未来とは、もちろん良い未来だと思っています。
本書に登場する料理はどれも美味しそうなのですが、お店の雰囲気もよくて、長く大切に使われているよう。私も自分の持ち物を長く大切に使いたいなと思いました。それぞれのお話での登場人物がつながっていくのもいいです。